研究内容

太田研では、ナノフォトニクスの研究を行っています。光の波長よりも小さな数十~数百ナノメートルの光学構造を使って光の振る舞いを制御します。そのような光学構造で発現する光現象はとても興味深く、様々な物理を使って解釈し応用することができます。関係するキーワードを一部挙げるだけでも、フォトニック結晶、量子ドット、メタ表面、量子光学、共振器量子電磁力学、半導体物性、磁気光学、トポロジカル物理...などなど多彩です。太田研ではそういった基礎物理だけでなく、物理を活用した役に立つ光デバイスの創出にも意欲的に取り組んでいます。量子情報処理で活躍する光量子回路や情報通信技術に重要な半導体レーザーやシリコンフォトニクスデバイスなど、物理を駆使して工学を発展させることを重要視しています。

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量子光集積回路

作ることが難しいと信じられている夢の技術の一つには、量子光集積回路が挙げられるでしょう。そこでは、ありとあらゆる極限性能を有する光量子デバイスを自在に組み合わせることが必要となります。また、量子光学や量子情報科学の知見を総動員する必要があります。太田研では、独自の半導体微細加工技術やハイブリッド集積技術を活用し、この大きな目標に挑戦しています。

参考文献:R Katsumi, Y Ota, et al., Optica 5, 691 (2018)

磁気ナノフォトニクス

ナノフォトニクスに磁性材料を適切に取り込むことは容易ではなく、磁気ナノフォトニクスの分野のほとんどは未開拓のままです。太田研では、MOOI基板という独自のアイデアを出発点に、世界にさきがけて同分野の開拓を進めています。この時間反転対称性を破った新しい研究プラットフォームでは、物理と応用の両面において無限の可能性が秘められています。

半導体光ツイストロニクス

ツイストロニクスでは層状材料を回転積層した物理系を探求します。同分野は、2018年に魔法角積層の二層グラフェンにおいて超伝導が報告されて以来、爆発的な盛り上がりを見せています。ナノフォトニクスにおいても、半導体フォトニック結晶スラブを回転積層することで光ツイストロニクスが探求可能です。太田研では、この未開拓分野を理論・実験の両面から研究し、新しい物理の発見を目指すとともに、集積半導体レーザーへの応用にも取り組んでいます。

トポロジカルナノフォトニクス

物性物理学の分野で花開いたトポロジカル物理は、ナノフォトニクスの分野にもビッグウェーブをもたらしています。同分野では、興味深い物理と有用な応用の発見が相次いでいます。太田研では、トポロジカル「ナノ」フォトニクスに先駆的に取り組んでおり、世界初の半導体トポロジカルナノ共振器レーザーの実現にも成功しています。

参考文献: Y Ota, et al., Optica 6 786 (2019), Nanophotonics 9, 547 (2020)

ハイブリッド光集積

どんなものでも自由自在に組み合わせてナノフォトニクス構造を作ることができれば、無数にある夢の光技術が実現できます。でもまだ人類は、その技術を有していません。太田研では、半導体ナノフォトニクス構造を中心に、転写プリント法を使った「自在な」異種材料ハイブリッド集積技術の研究を行っています。この技術は「作れないから研究できない」を無くし、メンバーの自由な発想を実現へと繋げます。